山梨県・シャトー酒折(山梨県)
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シャトー酒折
所在地:山梨県甲州町酒折町
醸造責任者:井島正義さん
設立:1991年
取材者:宮本輝紀(2016年3月28日) |
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山梨のシャトー酒折見学に向けて、朝4時過ぎに関西を出発、一路向かいます。途中、諏訪湖SAでひと休憩、信州らしい柔らかい素晴らしい風景ですね。 |
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気合が入り過ぎて、予定時間よりかなり早く目的地のシャトー酒折に到着。車内で待機していたら、井島正義チーフワインメーカーが私を発見、すぐ案内して下さいました。 |
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シャトー酒折は、ワイナリーツアーでも人気のスポットで、ショップも充実しています。 |
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醸造設備は、2階の通路からガラス越しに自由に見学することができます。 写真の左手に見える銀色の機械は、バルーン式圧搾機(機械内部の風船圧で葡萄を潰す機械)と真ん中の葡萄運搬用ベルトコンベア、写真右側の黄色い機械がアコーディオン式圧搾機(機械内部の板で挟む形で葡萄を潰す機械。現在はあまり使用されなくなってきている。)です。アコーディオン式圧搾機が使用されなくなった大きな理由として、搾汁率があまり良くないのと、資材メンテナンス及び掃除が大変だからだそうです。 |
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シャトー酒折の親会社は、洋酒輸入専門業者の老舗・京都の『木下商事株式会社』です。 創業者の木下康弘さんは、輸入だけでなく日本でワイン造りをしようと考え、1991年ワイナリー操業を開始しました。元々がワイン輸入業者なので、世界のワイン事情に明るく、日本ワインで生き残っていく方法として、
コストパフォーマンスで勝負するのではなく、日本らしさを出していく方向を選択し、日本で栽培しやすい甲州やマスカットベリーAといったぶどうを選択し、ワイナリーと農家が機能分担することで共存することを基本方針としています。 そのため、農家・農協との信頼関係を大切にし、いったん決めた取引量は減らさない原則を守っています。また、良いワインを造るには良いぶどうが必要な事を農家・農協に分かってもらう為に、農協職員と醸造スタッフが各農家を訪問して説明したり、収穫・搬入時にはスタッフ全員で農協の集荷場にぶどうを引き取りに行き、その場で選別を行い、良いぶどうにはAクラスに認定し、引き取り価格をアップしています。指標として、ワイナリー横に50aの自社畑を設け、栽培実験や農家に示すモデルケースぶどうの栽培場としています。 |
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シャトー酒折で
特長的なことは、徹底したサニテーション(殺菌・洗浄作業)です。 仕込みの時は全員が雨具着用、仕込みの傍らでも高圧洗浄機でコンテナを洗い、作業終了すれば器具を分解し、アルカリ洗剤⇒水洗い⇒クエン酸洗浄⇒水洗いという、徹底的な洗浄を行います。タンクのバルブなど、細かい所まで歯ブラシや汚れ落としスポンジを使って洗います。また、地下水を汲み上げた洗浄用貯水タンクまでワイナリー内にあり、床もピカピカです。これもすべて、ぶどうの持つ自然な味わいを素直にワインに表すという考えと、人の口に入るものを造るものは衛生・微生物管理を徹底的に行わなければならないという、井島チーフワインメーカーの信念に基づくものです。 |
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保管庫は、半地下の温度管理された空間で、熟成中・出荷前のワインが眠っています。 |
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シャトー酒折のぶどうについては、”チーム・キスヴィン“という栽培家集団が、植物生理学に基づき、ぶどうの樹を健康に育てることにより、収穫時期を健全な状態で遅らせ、完熟した果実を供給しています。
栽培家の畑ごとの細やかな努力に対して、醸造も小仕込みにしてその結果が分かるようにしています。
井島チーフワインメーカーは、”チーム・キスヴィン“の中心メンバー・池川仁さんから「貴方のワインは私が育てたぶどう
そのものの味がする。」と言われたそうです。
写真は、”チーム・キスヴィン”を池川さんと共に中心人物の一人、荻原康弘さん。 |
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井島チーフワインメーカーは、ワインが普通に食卓に上がるためには、求めやすい価格で飲み飽きしないワインをある程度安定的に造らなければならないと考えています。
その為には、発酵前の果汁を出来るだけ健全な状態にして、酵母が健全な発酵が出来る環境を造るのが大切で、それが故に
衛生管理をしっかりするのだと言います。
井島ワインメーカーの造ったワインは、どれもぶどう果汁の良さがのびのびと表れており、思わず各ワインに合わせる料理を一つ一つ考えてしまうような楽しさ・親しみやすさをもったものでした。
普段の日本の食卓に、金銭面・味覚面ともに合わせやすい安心のシャトー酒折、もっと定着していくことでしょう。 |